お世話になります、龍眠庵墓地で樹木葬や永代供養墓の施工を担当しましたオフィス石太郎です。
今回は、墓石に彫刻する文字について解説させていただきます。
ただし、墓石への彫刻する文字は、地域や宗派によって異なります。
宗派や寺院様からの指定がある場合は、そちらの指導に従ってください。
正面文字 家名・南無阿弥陀仏や具會一處・キリークなどの梵字
建立記録 建立年月・建立者
埋葬者の記録 戒名・俗名・死亡年月日・享年(行年)
家紋
正面文字
宗派での成約のない場合は、和型墓石でポピュラーな正面文字は〇〇家之墓です。
他に、〇〇家先祖代々之墓・〇〇家先祖代々・〇〇家代々之墓・先祖代々之墓など、地域や墓地によって色々な文字が掘られています。
真宗や浄土真宗での正面文字は、南無阿弥陀佛・南元阿弥陀佛・具會一處の三択になります。
浄土宗では、南無阿弥陀佛・キリーク+〇〇家之墓・〇〇家之墓と、真宗や浄土真宗ほど明確な決まりは無いようです。
ちなみにキリークとは、阿弥陀様をあらわす梵字です。
余談ですが「門徒物知らず」について
真宗や浄土真宗の檀信徒を門徒と呼びます。
「門徒物知らず」という言葉がありますが、自由で楽天的なイメージを持っておられる人が多いようです。
本来の意味は、「あれこれ考えずに南無阿弥陀佛だけを唱えていれば、後はお寺から言われた通りにしておればよい」という感じの、門徒の方々を馬鹿にしたような言葉です。
当時の門徒の方々は、とても熱心に信仰をされていて、寺院との結びつきが強固だったことが伺えます。
それがいつの日からか「門徒物いらず」と言いだす人が現れて、最近では「我が家は真宗(浄土真宗)だから何も要らないんです」と仰る方も増えているようです。
家紋
家紋につきましては、和型墓石といっても地方によって墓石の形が異なるため多少の上下はありますが、正面から見える前面に彫刻するのが一般的です。
埋葬者の記録
戒名・俗名・死亡年月日・享年(行年)は、棹石の側面に彫刻することが多いのですが、墓地内に建てた墓誌(霊標・法名碑)に彫刻する場合もあります。
向かって右面の一番右側が上座になり、8寸墓石の場合では右面に4~5名の彫刻が可能です。
戒名を彫刻をする順番につきましては、お亡くなりになった順に彫刻する場合と、目上の方から順番に彫刻する場合があります。
改葬をされる方など、〇〇家先祖代々之霊位(之菩提)を彫刻される方は、右面の右から一行目に彫刻いたします。
中には「墓石に戒名を彫刻する必要はない。墓石屋を儲けさせるだけだ!」と指導しているご住職もおられますので、彫刻をお考えの方は一度寺院にご相談ください。
余談ですが「享年と行年」
一昔前までは、享年は数え年で、行年は数え年や満年齢のどちらでも良いという風潮がありました。
その頃は、享年は修行をした年月を表し、お腹に宿って生を受けた瞬間から修行は始まっているとの解釈がされていました。
よって、享年は期間を表すため言葉として、年齢を表す「才」を付けないとされてきました。
時代と共に、享年と行年は同義語になり、最近ではどちらの場合も「才」を付けるのが妥当との見解が多勢になっています。
また、正確な文章の内容や時期は忘れてしまいましたが、国立国語研究所が「享年を満年齢で表記して問題なし」というような内容の見解を出したため、若いご住職の間では享年を満年齢で表記する場合が増えてきています。
墓石建立の記録
建立記録は、棹石背面に彫刻する場合が多いのですが、京都型墓石の場合は向かって左面に彫刻するのが一般的です。
墓石を建てた年月を彫刻しますが、具体的な日は彫刻いたしません。
日については、ほとんどの宗派は「吉日」と彫刻いたしますが、真宗や浄土真宗では「吉日」は彫刻せずに「日」についての表記はありません。
建立者ですが、代表者1名の場合や、複数名での彫刻、子供一同などの氏名を入れないケースなど様々です。
また、一般的には「建之」という文字を使います。
昔に先輩から聞いた話では、「之(コレ)を建てる」と読むそうです。
また、関西では建立者名のアンダーネームには、朱色を入れる風習があります。
山田太郎さんの場合は、太郎さんに朱色が入ります。
関東では建立者名に朱色を入れませんので、関西エリアを中心としたローカルルールです。
霊園の規程を確認してください
公営霊園などでは、「建立者は1名のみ彫刻に限る」や「正面文字と同一姓であること」などの規程がある場合がございます。
規程の賛否は別として、規程されている以上は守らなければ建墓の許可がありません。
規程の中でも「工事規程」に明記されている場合が多いので、墓石工事をお考えの方は事前に確認しておいて下さい。